究極の選択にどう対応するか

三井温熱

西洋医学か、補完代替医療か

強い意志と脆さを、同時に感じさせる眼差しをしたその女性は、力のこもった眼をまっすぐに向けてきた。彼女は膵臓ガンと診断されており、自覚症状として一日に一回、痛み止めを飲む必要があるほどの、ツラい腹痛を抱えていた。

以前私が施療した女性に、温熱を勧められて、ここに来たというわけだ。

今日で、4回目の温熱ということになる。最初彼女は、セルフケアで温熱を行っていきたいと考えていて、そのために一度は温熱プロに体験をお願いしたい、とのことだった。そして彼女の意志は、西洋医学による治療ではなく、温熱療法をはじめとした補完代替医療で、自分の膵臓がんと向き合いたいとのこと。

自分で良し悪しを判断して、自分の意志でガンという怪物のような病と対峙する。立派な方だと思う。

立派な方の唯一の弱点

「注熱でガン・難病が治る」(三井とめ子著・一光社発行)の存在で、私が三井温熱を始めた頃の20年前は、当然ガンを患う方を、多く診させていただいた。

ガンというのは、命が懸かっているので、健常人には、その心の内を本当に理解するのは難しい。希望と恐れと、諦めと怒りが入り混じりながらも、それを抑え込み、自分の治療法を選択するのには、並々ならぬ意志の力が必要なのは言うまでもない。

昔と違い現在は、補完代替医療の数も増え、中には科学的に分析しても、質の高い治療法があるので、西洋医学の治療方針に納得のいかない方には、選択肢が増えたと言える。

先程の、意志を持って自分のガンへの向き合い方を選択した女性には、弱点がある。意志の強さが仇となるパターンだ。

プラス思考がマイナスへ向かうとき

理路整然と、これからの自分で決めた治療方針を、私に伝える彼女は一見、強いようにみえる。しかし、多くのガンを患う方と対峙してきた私には、強さよりも心の不安と、それを打ち消そうとする焦りのほうが多く見受けられる。

例え優れた補完代替医療を選択しても、彼女の生き方は、自律神経的には交感神経型なのだ。バリバリに事業を展開し、その分、心身ともにストレスを抱えたせいで患うことになったのに、結局こうなっても、また同じ生き方を辿るのか…..

「落ち着け!その生き方は、善い治療を台無しにする。」三井温熱療法も、他の補完代替医療も穏やかにしか効かない。ゆっくり何年もかけて対峙していくつもりでいかないと駄目だ。

私は、はっきりと彼女に伝えた。彼女は戸惑いながら、「実は、そうなんです、どうしても、そうなってしまうんです。」

その貴重なプラス思考を、あなたの願いどおりプラスの結果に近づけたいなら、イケイケの思考を変える必要がある。穏やかに、周りをよく見て、不透明な情報に踊ろされず、真摯な意見に耳を傾け、時には、本当に信頼できる人に相談して決める。

究極の選択に温熱療法師ができること

直接ガンに眼を向ける治療法は、患う人にとって、ものすごく魅力的に映るものだ。かっての三井温熱療法も、そのなかの一つと思われていて、奇跡の温熱療法として、多くのガンを治したい人が希望を抱いたことだろう。

確かに、小さくなったり、転移ガンが10年以上動かず、普通の人より元気に生きている方もいる。どうしてそんなことが起こるのだろうか。いろんな理由が考えられるが今現在、細胞レベルであきらかになっているのは、「免疫細胞を確実に動かしている」というところだろう。これは、きちんと実証実験を一定期間行い、データとして結果が出ている事実だ。しかし、それよりも先程の例にもある通り、ガンを患う方の大部分は、ストレスを抱え自律神経のバランスが乱れている。特に交感神経過緊張の状態にあり、血流は悪く、その人に、なにか痛みがあれば、その痛みがさらに増す理由にもなる。呼吸機能が衰え、内臓機能は低下し、身体全体に疲労感を抱える。これでは、どんなによいといわれる治療法を行っても、100%の効力など、期待できないだろう。何をするにしても、自律神経を安定させなければ、苦労は徒労に終わるのだと私は思っている。

ガンを患う方は、身体にいろんな不調を抱え、ガンであることに強いストレスを抱えた状態で、長期戦に臨まなければならない。

三井温熱療法は、自律神経のバランスを整え、交感神経過緊張の状態に、副交感神経の風を注ぎ込む、類まれなる温熱療法である。その強力な温熱療法は、身体をラクにすることで、心の不安まで拭い去る。

それが私達にできる、最高に価値あることだろうと思っている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました